こんにちは、あいち相続ひろば 行政書士の森田哲也です。
前回は「遺言執行者の義務」についてお伝えしましたが、今回は「遺言執行の着手」についてお話しします。
遺言執行者が選任されている遺言があり、遺言者が亡くなった場合、遺言執行者はどのような手続きを進める必要があるのでしょうか?
今回は、遺言執行の開始時に行うべき主な手続きについて解説します。
遺言執行者が 就任を承諾した場合、直ちに任務を開始 しなければなりません。
その際、相続人に対し 「遅滞なく」遺言の内容を通知 する義務があります(民法1013条)。
この通知は、相続人全員 に行う必要があり、遺留分を有しない相続人にも伝えなければなりません。
具体的な通知方法としては、以下のような書類を送るのが一般的です。
また、通知の内容としては、次の事項を含める必要があります。
✅ 被相続人の死亡の事実
✅ 遺言書の存在とその方式(公正証書遺言、自筆証書遺言など)
✅ 遺言の内容
✅ 遺言執行者の就任の意思表示
✅ 遺言執行者の権限と職務の説明
✅ 相続人の遺産処分の制限に関する説明
✅ 遺言執行費用や遺言執行者の報酬に関する説明(規定がある場合)
通知方法については特に決まりはありませんが、後々のトラブルを防ぐために 配達証明付きの内容証明郵便 を利用するのが望ましいでしょう。
通知の有無が争点になると、遺留分侵害額請求の時効などに影響を及ぼすことがあるため、慎重に行う必要があります。
民法上、遺言執行者が相続人に通知する義務は明記されていますが、利害関係人への通知は義務ではありません。
しかし、円滑な遺言執行のためには、受遺者(包括遺贈・特定遺贈の受遺者)、認知された子、後見人が指定された未成年者 などにも通知するのが望ましいでしょう。
通知を行った後は、遺言の内容を 法的に検討 する必要があります。
例えば、次のような点を確認します。
✅ 遺言の有効性(署名・押印の有無、公証人の関与など)
✅ 過去の遺言との関係(新しい遺言が以前の遺言を撤回しているか)
✅ 遺言の解釈(曖昧な表現がないか)
✅ 遺留分への影響(遺留分を侵害しているか)
✅ 執行行為が必要な内容か(遺言執行者が具体的に何をすべきか)
特に、遺言の解釈や遺留分の問題は法的知識が必要 になるため、不安がある場合は専門家に相談することをおすすめします。
遺言執行者が就任したら、速やかに相続財産の調査と管理 を行う必要があります。
調査の結果をもとに、遺言執行者は 「相続財産目録」を作成し、相続人に交付 しなければなりません(民法1011条)。
調査すべき財産には、次のようなものがあります。
✅ 不動産(土地・建物の登記情報確認)
✅ 預貯金(銀行口座の確認)
✅ 有価証券・株式・投資信託
✅ 動産(自動車・宝石・絵画など)
✅ 債権(売掛金・貸付金など)
✅ 生命保険金の受取人確認
✅ 未払いの債務(借金・税金など)(※債務は遺言執行の対象ではないが、相続手続き上重要)
財産の内容によっては、遺言執行者が登記・登録変更を行う必要がある ため、専門的な手続きが必要になるケースもあります。
また、法律知識に不安がある場合は、専門家に代理を依頼 することも可能です。
特に、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家を遺言執行者に選任しておくことで、スムーズな手続きが期待できます。
調査が完了したら、相続財産目録を作成し、相続人に交付 する必要があります。
相続財産目録には、少なくとも 遺言者の財産を特定できる情報 を記載しなければなりません。
✅ 不動産 → 所在地・地番・登記情報
✅ 預貯金 → 銀行名・支店・口座番号・残高
✅ 動産(車・貴金属など) → メーカー・型番・価値
✅ 債権 → 債務者の氏名・金額・契約内容
なお、債務(借金など)は遺言執行の対象外ですが、包括遺贈の場合は 包括受遺者が債務も承継するため、記載する必要があります。
また、相続財産目録の作成にかかった費用は 遺言執行費用として被相続人の遺産から支出 できます。
今回は、遺言執行の着手時に必要な手続き について解説しました。
🔹 相続人への通知は遺言執行者の義務(配達証明付き内容証明郵便が推奨)
🔹 利害関係人への通知は義務ではないが、したほうが円滑
🔹 遺言の有効性・解釈・遺留分の検討が必要
🔹 相続財産を調査し、遺産目録を作成・交付する義務
次回は、遺言執行の具体的な手続き について、さらに詳しく解説します。
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